良かれと思って飲んだ薬が逆効果?胃酸抑制剤とSIBOの知られざる関係
胸焼けの薬を飲んでいるのに、なぜか不調が続く。
そんな経験はありませんか?胃酸を抑えれば楽になるはずなのに、お腹の張りやゲップは一向に改善しない。実はその症状、胃酸が「多すぎること」が問題なのではなく、胃酸を「抑えすぎること」で引き起こされる「小腸の問題」かもしれません。この記事では、多くの人が見過ごしている胃酸の本当の役割と、良かれと思った対処が不調を招くSIBO(小腸内細菌増殖症)のメカニズムを解説します。
「胸焼けには胃酸の薬」という常識の落とし穴
胸が焼けるような不快感。そんなとき、多くの人が胃酸を抑える薬に手を伸ばします。胃酸が出すぎることで食道の粘膜が荒れるのだから、その原因を抑え込むのは合理的で、当たり前の対処法に思えるでしょう。しかし、その薬を飲み続けても症状がすっきりしない、あるいは、胸焼けは少しマシになったけれど、今度はお腹がパンパンに張って苦しい、ということはないでしょうか。
実は、胃酸を抑える薬を使うことで、胸焼けがさらに悪くなることもあるのです。これは一体どういうことなのでしょうか。その答えは、私たちが「悪者」だと考えがちな胃酸が、実は私たちの体を守るために果たしている、もう一つの重要な役割を見過ごしていることにあります。
胃酸の知られざる役割:小腸の”門番”としての顔
私たちは胃酸を「食べ物を溶かす消化液」としか認識していないかもしれません。しかし、胃酸にはもう一つ、極めて重要な働きがあります。それは、強力な酸性による殺菌作用です。
口から入ってくる食べ物や飲み物には、無数の細菌が付着しています。これらの雑菌がそのまま腸まで届いてしまっては、腸内環境はひとたまりもありません。そこで、胃酸が強力なバリアとなり、ほとんどの雑菌を殺菌してくれているのです。まさに、小腸を守る屈強な”門番”と言えるでしょう。
実際に、消化管内の細菌の数は、場所によって桁違いに異なります。胃の中の細菌の数は1mlあたり1000個ほどですが、小腸では1万個ほど、そして大腸に到達すると100億から1兆個にも増殖します。この絶妙なバランスは、胃酸という門番が外部からの侵入者を防ぎ、腸内細菌が異常に増えることを抑える機能が備わっているからこそ保たれているのです。
ところが、胃酸を抑える薬を飲むと、この門番の力が弱まってしまいます。胃酸が不足してしまい、小腸の雑菌を抑えることができなくなってしまうのです。門番不在となった城に、招かれざる客がなだれ込むように、本来は胃で食い止められるはずだった細菌が、生きたまま小腸に到達し、そこで増殖を始めてしまいます。
あなたの不調の正体?SIBO(小腸内細菌増殖症)とは
この「小腸での細菌の異常増殖」こそが、SIBO(シーボ)と呼ばれる状態です。
本来、細菌の数が比較的少なく保たれているべき小腸に、大腸にいるべき細菌などが入り込んで増えすぎてしまうのです。
増えすぎた細菌は、小腸に送られてきた食べ物をエサにして、異常な量のガスを発生させます。研究によれば、SIBOにかかると、増えすぎた細菌が約10万個にもなり、これが大量のガスを生み出すことで、ほんのちょっとしか食べていないのにすぐお腹がパンパンに張ってしまうという症状を引き起こします。
さらに、小腸で発生したガスは、行き場を失って十二指腸から胃へと逆流します。
これが頻繁なゲップの原因となり、ガスと一緒に胃酸まで食道へ押し上げてしまうのです。
これが「薬で胃酸を抑えているのに、胸焼けが治らない」という矛盾した現象の正体です。
原因は胃酸の量ではなく、小腸から逆流してくるガスの圧力だったのです。
それは本当に「過敏性腸症候群」ですか?
慢性的な下痢や便秘、腹痛、お腹がゴロゴロ鳴る、食後のお腹の張り。
これらの症状に心当たりがあり、医療機関で「過敏性腸症候群(IBS)」と診断された方もいるかもしれません。しかし、ここにも大きな落とし穴があります。
ある報告によれば、過敏性腸症候群と考えられていた患者さんの85%の人は、よく調べてみるとSIBOだったというのです。
症状が非常に似ているため、SIBOが見過ごされ、IBSとして扱われているケースが少なくないことを示唆しています。
もしあなたがIBSと診断され、処方された薬を飲んでも一向に改善しないのであれば、その不調の根源はSIBOにある可能性を考えてみるべきかもしれません。
小腸の悲鳴が全身に広がる前に
SIBOの問題は、お腹の不快感だけにとどまりません。
ガスで常に風船のように膨らまされた小腸は、本来そのような圧力に耐えるようにはできていません。繰り返される膨張と収縮によって小腸の粘膜は傷つき、壁が薄くなって穴が開きやすい状態になってしまいます。
こうなると、本来は通してはいけない細菌の毒素や未消化の栄養分までが、血液中に漏れ出してしまう「腸漏れ症候群(リーキーガット症候群)」を引き起こすことがあります。
腸から漏れ出た異物は全身を巡り、免疫システムを混乱させ、湿疹やニキビといった肌トラブル、不眠、慢性的な鉄欠乏性貧血、さらにはうつ状態といった、一見するとお腹とは無関係に思える全身の不調に繋がっていくのです。
「腸は第二の脳」と呼ばれるように、腸の状態は私たちの心身全体と密接に連携しています。
安易に症状を薬で抑え込むのではなく、なぜその症状が起きているのか、その根本原因に目を向けることが大切です。
その胸焼けは、胃からのSOSではなく、もっと奥深く、小腸からの悲鳴なのかもしれません。
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